第17回大会2014
日本サンゴ礁学会 第17回大会報告
今回の大会は沖縄から高知への直通の飛行機がないなど交通の便が悪いこともあり、当初は参加者の大幅減を心配しておりました。しかし、大会5日間の参加者数は合計で186名、口頭発表39件、ポスター発表71件、保全活動ポスター発表10件があり、予想より多くの方にご参加いただきました。自由集会は2日間に渡って4件が開催され、活発な議論が行われました。大会3日目には緊急企画としてワークショップが開催され、宝石サンゴの生態、漁や取引の現状、冷水性サンゴなどを知る良い機会となったと思います。懇親会では昨年に引き続き若手の会の皆さんによる「サンゴdeビンゴ」で盛り上がり、鰹のタタキやカメノテなど高知県の名物を楽しんでもらいました。大会4日目には「温帯における造礁サンゴ研究の意義と価値の創造」と題して、温帯サンゴを主役としたシンポジウムが開催されました。
大会の目玉企画として1泊2日のエクスカーションを実施しました。高知県西南部の元気なサンゴ群集を実際に見て欲しいという思いで企画したところ、高知市からバスで約4時間かかる遠方ながら、ダイビング16名、グラスボート3名の参加がありました。あいにく海況が悪く黒潮生物研究所前の海でのダイビングとなりましたが、参加者には枝状ミドリイシ優占の群集を見てもらいました。「これほどサンゴがあるとは思わなかった」「新たな研究のアイデアが浮かんだ」といった期待以上の反応をいただき、初めて温帯のサンゴ群集を見た参加者には大いに刺激になったように思います。グラスボートも運航されませんでしたが、水族館や竜串海岸の散策などで楽しんでもらいました。今後も地方大会では是非エクスカーションを企画していただきたいと願っております。
本大会では非会委員の参加者が多く、会員の皆さんにとっては例年より初めての顔ぶれが多かったかもしれません。四国ではサンゴを主とした沿岸生態系の利活用が各地で行われており、本大会ではそれらの活動を知ってもらおうと、四国各地の団体に呼びかけ参加していただきました。これを機にサンゴ礁のある地域とない地域の交流や協動につながることを願っております。
最後に大会を無事に終えることができましたのは、実行委員の久保田さん、関田さん、中村さん、中地さん、小渕さん、山下さんと、高知大学や東海大学横地研の学生アルバイトの皆さんのおかげです。本当にありがとうございました!
実行委員長:目﨑 拓真
実行委員:中地シュウ・小渕正美・山下薫・久保田賢・関田諭子・中村洋平
スケジュール (終了しました!)
日程:2014年11月27日(木)~12月1日(月)
開催場所:高知市丸ノ内2丁目1番10号、TEL: 088-822-2035 高知城ホール
第17回大会スケジュール
8月4日(月)10:00 事前支払・参加登録、研究発表申込開始
9月26日(金)17:00 事前支払・参加登録、研究発表申込締切(これ以降は割引の効かない当日払いとなります。事前払いするには事前参加登録が必須です。)
10月17日(金)17:00 要旨締切(電子メールによる受付)
11月27日(木) 大会1日目
午前 各種委員会
午後 受付開始、各種委員会、評議委員会
夜 自由集会
11月28日(金) 大会2日目
午前 口頭発表、ポスターセッション
午後 口頭発表、ポスターセッション
夜 自由集会
11月29日(土) 大会3日目
午前 口頭発表、ポスターセッション
午後 口頭発表、ポスターセッション
夕方 総会、受賞講演会
夜 懇親会
11月30日(日) 大会4日目
午前 公開シンポジウム
午後 エクスカーション
12月1日(月) 大会5日目
終日 エクスカーション
プログラム
第17回大会の口頭・ポスター発表のプログラム(10月23日現在)は、こちらをご参照ください。また、大会に関しての詳しい情報、最新のプログラム(11月5日現在)は、日本サンゴ礁学会ニュースレター63号に掲載されていますので、ご利用下さい。
・日程・口頭発表(10月23日版)
・ポスター発表(10月23日版)
第17回大会 公開シンポジウムなど
<宝石サンゴワークショップ>【参加費無料】(終了しました!)
日時:2014年11月29日(土)
場所:高知城ホール
主催:日本サンゴ礁学会
オーガナイザー:野中正法・目崎拓真
司会:浪崎直子
モデレーター:茅根創
2014年10月以降に新聞やニュース番組等で広く報道されたことにより、「宝石サンゴ」に対する国民の関心が高まり、学会も多くの問い合わせを受けました。宝飾品の素材として扱われ国際的な取引も盛んな宝石サンゴ類を含む、冷水性・深海性サンゴ類は、浅海域でサンゴ礁を形成る造礁サンゴ類とは類縁的にはやや遠い存在ですが、一般的にはこれらは明確に区別されていません。また、報道においてもかなりの混乱が認められています。国内の主産地であり、宝石サンゴ漁やその宝飾品加工が文化として根付いている高知県において、日本サンゴ礁学会第17回大会が11月27日~12月1日にかけて開催されることを機に、貴重な資源の一つである宝石サンゴ類および冷水性・深海性サンゴ類に関する科学的知見の整理と解説を目的として、11月29日(土)16時半-18時、学会と大会実行委員会の共催によって急遽宝石サンゴワークショップを開催致しました。
目崎による趣旨説明ののち、はじめに野中(沖縄美ら海水族館)より、サンゴの分類体系における宝石サンゴの位置づけ生態、生殖など、基本的な科学的知見が解説され、次に、林原 毅さん(水産総合センター・国際水産研)より、国際的な保護の枠組みと天皇海山列における深海サンゴ調査結果が紹介されました。最後に、田中元二さん(宝石珊瑚保護育成協議会)からは、我が国における珊瑚漁の現状と持続可能な資源保護について話がありました。
さらに、3名の講演者が会場からの質疑を受け、研究者の数が少なく、生態、生殖、分布、現存量など科学的に不明な点が多いこと、またフロアの会員からは、飼育実験の必要性、生殖、遺伝学的研究の状況や、酸性化や年輪を使った海洋環境復元など、様々な研究が可能な対象であるとの発言があり、学会として今後宝石・深海サンゴの研究を、サンゴ礁研究の重要なテーマとして位置づけ、研究を発展させていくことが合意されました。
(茅根・野中・目崎)
<温帯における造礁サンゴ研究の意義と価値の創造>【参加費無料】(終了しました!)
日時:2014年11月30日(日)9:20~ 12:00
場所:高知会館2 階「白鳳」(高知市本町5-6-42)
主催:日本サンゴ礁学会
オーガナイザー:新保 輝幸(高知大学)・目崎 拓真((公財)黒潮生物研究所)
参加費:無料 申込み:不要
今回の公開シンポジウムは、まだマイナーな四国高知のサンゴについて理解を深めることで、温帯のサンゴを取り巻く現状やその可能性について考えるために企画されました。5名のシンポジストから様々な視点の話題提供があり、総合討論では会場から貴重なご意見を多数いただき、有意義な意見交換ができました。今回のシンポジウムでは温帯サンゴ群集の特徴の解説やサンゴ礁域との比較が行われたほか、四国のサンゴ群集の現状が画像や映像などで紹介され、会場から「四国にはこんなにサンゴがあるのか」と反響をいただきました。また近年、高知大学が進めている新しいサンゴ研究の報告などにより、温帯におけるサンゴ研究の価値や発展性が示されました。さらに四国におけるサンゴの利用や保全に関する事例報告では、地域資源であるサンゴの価値が再認識されるとともに、「利用と規制」という問題が浮き彫りになりました。近年、四国太平洋岸では長期的な環境変動に伴うサンゴの分布拡大が顕著であり、沿岸生態系の変化が地域における人と海との関わり方の変化にもつながっています。変化のフロントにある温帯サンゴ群集を取り巻く問題・課題について、今後、サンゴ礁域での先行事例をお手本に取り組んでいきたいと思います。また、今回のシンポジウムを足掛かりとし、温帯でのサンゴ研究のあり方や利用と保全について、継続して議論できる場を作っていけたらと考えています。
オーガナイザー:新保 輝幸・目崎 拓真
第17回大会 <自由集会(提案募集型企画)>
自由集会 ① 若手の将来を考える -日本サンゴ礁学会若手の会- (終了しました!)
オーガナイザー: 中嶋 亮太(JAMSTEC)・本田 葉月(琉球大)
話題提供者:本郷 宙軌・栗原 晴子(琉球大)、安田 仁奈(宮崎大)、梅澤 有(長崎大)、浪崎 直子(東京大)、高橋 麻美(科学未来館)
就職難、ポスドク問題、仕事とプライベートの両立…学生と若手の未来に立ちはだかる壁がいっぱい。講演者の皆さんがどう巧く乗り越えてこられたのか、今何を考えていらっしゃるのか興味があり参加しました。ポスドク1年生の自分にとって非常におトク感のある充実の集会でした。 これまで壁にぶつかる度に親しくさせて頂いている先輩、先生方に相談にのって頂きながら進路を決めてきました。それでも所属していた臨海実験所は大教室ではなかったため、今回のように何人もの方々から、ご経験に基づく生のお話を伺える機会は滅多にありませんでした。中でも、今新たにぶつかっている悩み事、その解決のために若手の間にこれをしておけばよかった、留学先はこう決めれば良かったというお話は、今の視点からは考えが及んでいなかったので非常に勉強になりました。 進路に悩む学生向けに専門知識をいかせる職業リストも示されましたが、今回は学生の参加者が意外に少なかったようです。モチベーションも上がる機会ですから次のチャンスがあれば、ぜひ多くの方に参加して欲しいなと思いました。それに普通は親しくさせて頂いてから飲み会などで聞けるような貴重なお話や写真が満載で面白かったです。企画、ご講演ありがとうございました。 内容の詳細は、こちらのページをごらんください。
座安佑奈 (OIST)
自由集会 ②蛍光撮影技術を生かした海洋生物イメージングとモニタリングII (終了しました!)
オーガナイザー:古島靖夫・丸山 正(海洋研究開発機構) / 篠野雅彦(NMRI)/鈴木貞夫(O.R.E)
海洋生物が有する蛍光を利用した海洋生物のイメージングとモニタリングを行うためには,克服すべき技術的課題が多々あり,さらに、その技術をどのように海洋生物の生理・生態学的研究に生かすかと言った重要な課題も残されています。サンゴから深海生物までの蛍光の現場撮影技術と多様な海洋生物研究とをどのように融合できるのか?不足している技術や調査は何か?昨年に引き続き,分野横断型の議論を行い今後の可能性を探ることを目的に自由集会を開催しました。
我々の蛍光研究の進捗報告に加え,㈱ニコンのご協力により開発途上のマルチスペクトルカメラに関するお話を頂戴しました。また,マルチスペクトルカメラと,JAMSTECで開発中のマルチ励起光カメラのデモンストレーションを行い,蛍光撮影技術に関する理解を深めました。意見交換では,蛍光撮影や近赤外線撮影の海洋生物のイメージングやマッピングへの応用の可能性について活発な議論が行われました。例えば,モンシロチョウの羽は紫外線で見ると雌雄で模様が異なるが,類似のことが海洋生物にもあって蛍光や近赤外線で可視化出来るのではないか等の意見や,今後の実践的な研究への活用・進展に期待あるいは参加したいとの意見も頂きました。
蛍光に関する技術開発は未だ点に過ぎませんが,分野の枠を超えた議論の繰り返しにより,それらが繋がって面になる時がくると信じ,前へ進む努力をして行きたいと考えています。
古島靖夫
自由集会 ③サンゴ礁保全行動計画見直しに向けての提言書について (終了しました!)
オーガナイザー:中野 義勝(琉球大学・サンゴ礁保全委員会委員長)
サンゴ礁生態系保全行動計画(環境省、H22年公表)の更新時期をひかえ、サンゴ礁学会ではサンゴ礁生態系保全行動計画提言タスクフォース(TF)を設置し、サンゴ礁保全再生行動計画(サンゴ礁学会、H19年公表)の見直しを含めた包括的提言の作成を進めており、多くの学会員・保全関係者の参加の場とて本自由集会は企画しました。当日は会場に入りきれない方もあり、サンゴ礁保全への関心の高さを頼もしく思いました。集会では、TFがこれまでに構成した基本骨子試案が説明され、本大会直前に恩納村で開催された国際サンゴ礁イニシアティブInternational Coral Reef Initiative(ICRI)で英文版の骨子を提出したことなどが紹介されました。サンゴ礁保全が地球環境問題と不可分であると同時に、人の生活圏の一部であることを踏まえて、環境省始め関係機関の方々を交え活溌な議論が交わされました。多くの保全努力にもかかわらずサンゴ礁の衰退はなぜ止まらないのか、学会として分かりにくいところを分かりやすくまとめて示すことに配慮して章立てを構成するとともに、既存の取り組みの現場にも使いやすい提言として有効な保全の方向性と具体的な方策を示すとともに概要版を作成し、作業の過程で見えてくる課題にサンゴ礁保全委員会で継続的に取り組んでゆくことが確認されました。
TFの活動に関心をお持ちの方は学会HPのお知らせをご覧下さい。
中野 義勝
自由集会 ④サンゴ礁研究・温故知新 80年前のパラオの若手研究者達 (終了しました!)
オーガナイザー: 佐藤崇範(琉球大学国際沖縄研究所)
話題提供者:日高道雄(琉球大学)、磯村尚子(沖縄高専)、佐藤崇範
パラオ熱帯生物研究所(1934-43)が設立されてから、今年で80年となります。これを機に、改めて日本のサンゴ礁研究の歴史を見つめ直し、現在の学術研究や保全活動の位置づけを再確認しながら、今後、より深みをもって進展させていくための一つのきっかけとなることを期待して、本自由集会を企画しました。 今回は、パラオ熱帯生物研究所に派遣されていた3名の研究者の研究人生を通して、サンゴ礁研究の変遷だけでなく、研究・教育に対する姿勢、自然を研究対象とする視点などについてご紹介しました。
日高先生には、川口四郎先生のサンゴ類に関する生物学的研究への多大なる貢献についてお話しいただくとともに、ご自身の研究との共通点や2004年に沖縄で開催された国際サンゴ礁シンポジウムの際に作成した川口先生のインタビュー映像などについてもご紹介いただきました。磯村先生には、阿刀田研二先生とご自身の研究の共通点を軸に、直接お会いした際のエピソードや関係者による記念文集などから、その研究と教育の両面についての姿勢やお人柄についても紹介していただきました。また、佐藤は阿部襄先生について、その経歴と自然や生物を研究する際の独特の視点、多くの児童向け科学書を執筆された動機などについて紹介させていただきました。
20名を超える方々、特に若い学生・研究者の方々にも多くご参加いただき、大変ありがとうございました。次回学会大会以降も、年齢や経験の別なく、サンゴ礁を専門とする者同士交流を深め、研究や活動を進めていくための「滋養」となるような場として、類似の自由集会を開催していけたらと考えています。
佐藤崇範
懇親会若手会企画
「サンゴ de ビンゴ」をふりかえって (終了しました!)
昨年、とても好評だった『サンゴdeビンゴ』を今年も開催しました。この若手懇親会企画は学会員同士の交流を深めることを目的としてサンゴ礁学会若手の会の有志で企画・実施しており、今大会で3回目となりました。
『サンゴdeビンゴ』は、学会員がお互いの研究と活動に興味を持ってもらうために、要旨集に記載されているキーワードを用いてビンゴカードを特別に作成して行なう、ユニークなビンゴ大会です。今年は初の高知大会でしたのでキーワードに“おきゃく”などのご当地ワードも取り入れたのですが、慣れない進行のせいで、せっかく入れたワードを紹介する間もなくゲームが終わってしまったことが残念です。また、今回は準備や進行の際に東京支部と沖縄支部以外の若手メンバーも積極的に参加してくれました。普段は2つの支部を中心に活動しているため、その他の地域のメンバーとも交流を持てたことはとても良かったと思います。若手会では今後も学会員の交流が深まるような企画を続けていこうと思っています。皆さま、次回もどうぞお楽しみに。
(本田 葉月)