第19回大会2016
日本サンゴ礁学会 第19回大会報告
※ニュースレター72号では写真付きで報告がご覧になれます。 ⇒ NLはこちら
去る12 月1 日(木)から4 日(日)まで、沖縄タイムスビルにて、第19 回大会が開催されました。那覇市の中心部かつモノレールの駅から近い場所で、県外からの参加者に利便性が良い場所を選びました。夏に国際サンゴ礁シンポジウムがハワイで開催されたこと、また大会最終日には3 万人が出走する那覇マラソンがあり、宿泊費が高騰したことから参加者の大幅減が懸念されましたが、例年並みの参加人数があり杞憂に終わりました。なお、会場の関係から昨年の慶應大会のようなテーマ・セッション枠は設けず、また企業展示も行いませんでした。直前の11 月に国際動物学会・日本動物学会合同大会が沖縄で開催され、かけもち担当も多く、少なめの実行委員で臨みました。
持ち込み企画として、喜界島サンゴ礁科学研究所がサポートした小学生によるサンゴに関するポスター展示が行われました。また、学生有志によるニュースレター表紙デザインコンテストが企画され、創刊号から71 号までの表紙が並び、場を盛り上げてくれました。
本大会には最終的に、183 人の会員、17 人の非会員にご参加いただき、108 人の参加があった懇親会には瀬底島から瀬底研究施設職員を含む2名が駆けつけ琉舞を披露していただき場が華やぎました。進行役の大会委員長のミスで次年度大会(東京工業大学、大岡山キャンパス、灘岡委員長)のアナウンスと締めの会長挨拶を失念してしまいました、この場を借りてお詫び申し上げます。発表者の所属を見ると、タイのRamkhamhaeng大学からは総勢10 名の参加者がありました、また地元の沖縄工業高等専門学校の学生らによる発表が多かったのも本大会の特徴です。
口頭発表は全32 件、ポスター発表は全80 件でした。自由集会は6 件の企画があり、また初日の夜には特別集会として、日本-イスラエルWS「サンゴ礁生態研究における分子生物学的手法」(主催:日本学術会議)が開催されました。
最終日には、公開シンポジウム「北琉球におけるサンゴ礁、- 研究・保全の現状と課題-」が開催され、70 余名の参加者がありました。本大会の口頭、ポスター発表および自由集会の特徴として、今夏の大規模白化に関する研究が多数あったことが挙げられます。トピックではあるものの、今後のサンゴ礁研究にとっては憂慮すべき課題でもあります。
諸々の不手際もありましたが、概ね順調に開催することができました。この場を借りて、ご参加頂いた皆様のご協力に深く御礼を申し上げます。
(文責:大会委員長 山城 秀之・琉球大)
大会実行委員:井口亮,磯村尚子,栗原晴子,酒井一彦,中野義勝,中村崇,波利井佐紀,守田昌哉
日程:2016年12月1日(木)~12月4日(日)
会場:沖縄タイムスビル(http://www.okinawatimes.co.jp/list/info/building)
(ホール3階:口頭発表、総会、受賞講演、懇親会)
(1階ロビー:ポスター発表),
各種委員会・自由集会は当ビル会議室(5階)または近隣の会議室等
〒900-8678沖縄県那覇市久茂地2-2-2 電話: タイムス管理部(098-851-5185)
沖縄都市モノレール「県庁前駅」より200m,徒歩5分
第19回大会スケジュール
8月8日(月)10:00 事前支払・参加登録、研究発表申込開始
9月23日(金)17:00 事前支払・参加登録、研究発表申込、自由集会申込の締切
(これ以降は割引の効かない当日払いとなります。事前払いするには事前参加登録が必須です。)
10月14日(金)17:00 要旨締切(電子メールによる受付)
☆大会スケジュール/案内☆
12月1日(木) 大会1日目
午前:9:00~ 各種委員会
12:00-14:00 企画委員会
14:00~18:00 評議員会
18:10~20:00 イスラエル・日本学術会議との合同会議(共催,近隣ビル)
18:00-20:00 自由集会
12月2日(金) 大会2日目
8:30~ 受付開始
9:00~16:00 口頭発表
16:00~18:00 ポスター発表(1)
18:00~20:00 自由集会
12月3日(土) 大会3日目
9:00~ 受付開始
9:00~11:00 ポスター発表(2)
11:00~15:15 口頭発表
15:30~18:00 総会/受賞講演
18:15~20:00 懇親会
12月4日(日) 大会4日目
9:00~ 受付開始
9:15~12:00 口頭発表
13:00~15:30 公開シンポジウム
プログラム
第19回大会の口頭・ポスター発表プログラムは、NL71号で公開されています。
https://www.jcrs.jp/wp/?wpdmact=process&did=MTIuaG90bGluaw==
公開シンポジウム
「北琉球におけるサンゴ礁、研究・保全の現状と課題」
日時:2016年12月4日(日曜日) 13時00分~15時30分 (参加無料)
会場:沖縄タイムスビル(3階ホール)
主催:日本サンゴ礁学会第19回大会実行委員会、共催:日本サンゴ礁学会サンゴ礁保全委員会
後援:沖縄県・沖縄県サンゴ礁保全推進協議会・沖縄タイムス社・鹿児島県・環境省・南海日日新聞社・日本学術会議・琉球新報社・NHK沖縄放送局 (アイウエオ順)
内容:南西諸島の全域でサンゴ礁は見られるが、比較的調査研究とその保全活動の活溌な慶良間列島・先島諸島と比較して、大隅諸島・トカラ列島・奄美群島および沖縄諸島北部の情報は充分とは言えず、その保全活動の規模も小さい。気候変動下における亜熱帯から温帯への漸進帯としてこれらの地域の情報は重要で、保全活動の活性化も急がれる。南西諸島のサンゴ礁理解を深め、このような南北格差を解消することを意図して企画したものである。
講演 :
13:10-13:30 山野博哉(国立環境研究所)「サンゴから見た与論~種子島の重要性」
13:30-13:45 藤井琢磨(鹿児島大学国際島嶼教育研究センター)「奄美大島の生物多様性研究の現状」
13:45-14:00 興 克樹(奄美海洋生物研究会)「奄美大島のサンゴ礁保全の現状と課題」
14:00-14:20 山崎敦子(北海道大学喜界島サンゴ礁科学研究所)「喜界島周辺海域のサンゴ礁生態系の時空間分布:喜界島サンゴ礁科学研究所を拠点にしたサンゴ礁研究と環境教育の新たな試み」
14:20-14:40 中井達郎(国士舘大学)「沖縄島以北におけるサンゴ礁保全の問題点」
14:55- 15:30 パネルディスカッション
パネラー:山野博哉・藤井琢磨・興 克樹・山崎敦子・中井達郎
総合司会:中野義勝
※(公開シンポジウムのパンフレット)は、こちらからダウンロードできます。
<公開シンポジウム開催報告>
本年度シンポジウムは以下の要領で実施しました。開催趣旨:南西諸島のサンゴ礁では、比較的調査研究と保全活動の活発な慶良間列島・先島諸島と比較して、国立公園指定を控えた奄美群島・大隅諸島・トカラ列島および沖縄諸島北部の情報は充分とは言えず保全活動の規模も小さいです。気候変動下における亜熱帯から温帯への漸進帯としてこれらの地域の情報は重要で、保全活動の活性化も急がれます。本シンポジウムは、このような南北格差を解消し南西諸島全体の理解を深めることを期して企画しました。
期日:2016 年12 月4 日(日)13:00 〜15:30
会場:タイムスホール(那覇市)
主催:日本サンゴ礁学会第19 回大会実行委員会
共催:日本サンゴ礁学会サンゴ礁保全委員会
後援(アイウエオ順):沖縄県・沖縄県サンゴ礁保全推進協議会・沖縄タイムス社・鹿児島県・環境省・南海日日新聞社・日本学術会議・琉球新報社・NHK沖縄放送局
当日は70 余名の参加者を得、中野による趣旨説明の後、以下の講演を行いました。
山野 博哉(国立環境研究所)は、生物多様性条約で示され海洋保護区設定の基礎資料として期待されるEBSA(生態学的、生物学的に重要な海域)に基づき、サンゴを対象とした全国規模で解析し北琉球の重要性を示しました。
山崎 敦子(北海道大学喜界島サンゴ礁科学研究所)は、隆起活動による過去10 万年間の離水サンゴ礁と現生造礁サンゴ群集を観察できる喜界島で、過去の気候変動によるサンゴ礁の形成速度とサンゴ群集の組成変化について研究するため、2015 年に設置された喜界島サンゴ礁科学研究所の研究と環境教育活動について紹介しました。
藤井 琢磨(鹿児島大学国際島嶼教育研究センター)は、奄美大島周辺海域は魚類や藻類の分布の北限と南限が混在し生物地理学上重要な位置づけにあるが、有藻性サンゴ類を含め多くの海洋生物における種多様性は未解明であるので、鹿児島大学が平成27 年度に奄美大島に設置した分室の研究を紹介しました。
興 克樹(奄美海洋生物研究会)は、1973 年〜2003年に実施された奄美群島国定公園海中公園地区での奄美群島海中資源保護協議会によるオニヒトデ駆除後、2004 年以降の奄美群島サンゴ礁保全対策協議会によるサンゴ保全海域(約30 海域)でのオニヒトデ駆除とモニタリング(約100 地点)の情報共有によって、各市町村で柔軟に保全海域を設定するサンゴ群集保全活動を紹介しました。
中井 達郎(国士舘大学)は、奄美群島におけるサンゴ礁への関心は研究者や保全関係者で高まりつつあるが一般の人々には広がっておらず、登録にむけた準備が進められている「奄美・琉球」世界自然遺産でも海域は対象外であり、分布北限域である奄美群島以北のサンゴ礁についての価値の認識と共有が、島嶼の陸域と海域を一体にとられた統合的な自然環境保全につながり、琉球列島全体の自然環境保全を考える上で不可欠な視点であると指摘しました。
これを受けたパネルディスカッションでは、サンゴ礁を含めた自然環境保全には琉球列島全体の多様性を価値と認識し、各島の拠点間の連携と人的交流の重要性が確認されました。 (文責:中野義勝)
自由集会
自由集会① 「地質・化石が囁く琉球列島のサンゴ礁地形・生態系変遷史 2016」
オーガナイザー:岨 康輝(東邦大学・理)・本郷 宙軌(琉球大学・理)
話題提供者:本郷 宙軌(琉球大学),中島 祐一(沖縄科学技術大学院大学),浅海 竜司(琉球大学),藤井 琢磨(鹿児島大学),植村 立(琉球大学)
地質・化石試料はひそひそながら重要な事を語っています。会場となったタイムスビル周辺には琉球層群と呼ばれる石灰岩が分布し、それは過去の地球環境を記録し、琉球列島の地史を語るうえでは欠かせない存在です。タイムスビルの壁面にも琉球石灰岩が使用されています(写真)。普段見過ごしているが実はとても身近な地質・化石の重要性を再認識してもらいたく、自由集会を企画しました。
今回の集会では鍾乳石から気温の復元、離水サンゴ礁から過去のサンゴ被度の復元、ハマサンゴを使った水温復元、化石に残りにくいサンゴ礁生物(スナギンチャクなど)、サンゴを使った遺伝子流動パターンなど、過去から現在、地質から化石、生物と幅広いテーマの発表がありました。定員12 名の会場に20 名ほどの参加者があり、大盛況でした。当初、総合議論の時間を設けていましたが、十分に議論する時間が取れなかったため、国際通りに会場を移して議論を続けました。
今後も地質・化石試料の囁きに耳を傾け、次回大会では新たな知見を紹介できる機会を設けたいと考えています。(文責:本郷 宙軌)
自由集会② 「研究のためのフィールドワークにおけるSCUBA 潜水のスキルと資格に関する現状と課題」
オーガナイザー:中井 達郎(国士舘大学)
近年、サンゴ礁研究のフィールドワーク現場では、潜水士免許の取得の徹底をはかる一方で、日本では労働安全衛生法に規定された国家資格(免許)である潜水士免許制度の課題も問題となってきています。例えば、潜水士免許がスキルの検定をともなわない筆記試験のみによる認定であること、筆記試験が日本語のみによる実施であることなど。後者は外国人研究者を日本で雇用する場合の課題ともなっています。今回は、特に発表者をお願いせずに、情報交換と議論を行い、課題の整理と問題意識の共有を目的に自由集会を開催しました。冒頭、2016 年11 月に沖縄本島で発生した潜水事故について、中野義勝氏(琉球大学)らから、この時点で把握されていた状況の報告をして頂きました。この事故事例から見えてくる課題や参加者が現実に抱えている問題・経験などから、研究における潜水活動とその安全対策に関わるさまざまな課題について活発な議論が行われました。その他、主要論点は調査安全委員会のWebページ(https://www.jcrs.jp/wp/?page_id=1056) をご参照下さい。
今後の対応として、研究者向けの潜水技術・安全講習などの研修制度を検討する。外国人潜水士資格問題について、沖縄県が指定された「国家戦略特区」の基本事項として唱われた「潜水士試験の外国語対応」の推進を関係機関に働きかける。等が話し合われました。また、研究のための潜水活動・フィールドワークの安全対策に関するアンケートを実施する予定なのでご協力ください。このような活動を通じて、サンゴ礁研究・教育における潜水活動をはじめとするフィールドワークの活性化に繋げたいと考えています。(文責:中井 達郎)
自由集会③ 「蛍光撮影技術を生かした海洋生物イメージングとモニタリング-Ⅳ」
オーガナイザー:古島 靖夫(JAMSTEC),丸山 正(JAMSTEC),Sylvain Agostini (SMRC) ,鈴木 貞男(O.R.E.)
※ JAMSTEC: 海洋研究開発機構,SMRC:筑波大学下田臨海実験センター
海洋生物・生態学研究の視点から蛍光撮影技術を如何に利用できるか、について分野横断型の議論を気楽に行える場としてスタートした自由集会もお陰様で4 回目を迎えることが出来ました。今年は、蛍光撮影に興味を持って下さった若手の研究者の方々にも参加頂きました。
多波長励起による海洋生物の蛍光現場イメージング技術を使って、どのような海洋生物の生理・生態学研究が可能か?という話題を中心に議論を交わしました。前回の集会以降、多波長励起式の蛍光撮影によって得られた画像から、そこに生息している生物(サンゴや藻類、石灰藻等)の判断が可能になりました。しかしながら、サンゴ等の海洋生物が発する蛍光の強さがどのくらいあるのか、あるいは、その強弱が周辺環境によるストレス等で変化するのかといった未解明な点が多々あります。蛍光画像から如何に定量的な評価をするかが、今後の重要な課題であると示唆されましたが、撮影技術の発展のみならず生物が蛍光物質を持つ意味や、その利用方法等といった蛍光自体に対する理解も同時に必要となる、という意見も出されました。また、蛍光観察時には全波長で励起することで得られる、全蛍光を観察することが理想ではあるが、一方である特定の物質の蛍光のみ、たとえばクロロフィルa の蛍光だけが撮影できるフィルターセットを用いた蛍光撮影が可能になれば、サンゴ内部の様子などが把握できるであろうことが議論されました。環境影響評価の視点から見ると、今年発生したサンゴの白化現象に対して、既に死んでしまって骨になったサンゴなのか、白化してはいるが生きているのかの判断に使える可能性が見出せました。撮影技術面では、光環境を統一するための技が必要であるとの意見を頂きました。
集会の最後には、近年安価になりつつある小型ROV(組み立て式)と、我々が開発したハンディマルチ蛍光撮影装置とのデモンストレーションを行い、蛍光撮影技術に関する理解も深めました。
蛍光撮影技術を生かした海洋生物研究を拡充するためには、引き続き分野横断型の議論を行うことが大切であると我々は信じています(千里の道も一歩から)。(文責:古島 靖夫)
自由集会④ 「サンゴ礁の未来を考える学生集会」
オーガナイザー:大野 良和(琉球大学理工学研究科博士3 年次)
昨年に発生した世界規模のサンゴの白化現象は、サンゴ礁学を専門とする私たち学生にとって、忘れることのできない出来事となりました。そこで、まずは学生同士で海洋の環境問題について問題意識を共有することが重要と考え、自由集会を企画しました。
集会では13名の学生を募り活発に議論を行いました。具体的には、グループディスカッションを行いながら、様々な海洋環境問題について、情報共有と対策について意見交換を行い、最後に白化現象について議論を行いました。
ディスカッションの中で、法整備や意識改革をより徹底することで、例えば、「海洋のごみ問題、ダイバーによるサンゴ礁の破壊、生物の乱獲、生活排水」といった環境問題については、改善が見込めるのではないか、といった意見にまとまりました。白化現象の対策については、非常に難しい議題ではあったものの、様々な視点から意見交換を行いました。その中でも、人が直接手を加え、積極的に白化現象を解決する試みについて、議論が行われました。例えば、「環境ストレス耐性を持つサンゴ(スーパーコーラル)を選定し、移植技術に応用する」といった意見や、「温度耐性を持つ共生藻類を開発する」といった意見が出ました。さらにGeo-engineering の観点から「海洋深層水を利用し夏季の海水温の上昇を抑える」といった、斬新な意見も出てきました。短い時間ではありましたが、様々な背景を持つ学生同士が交流を深め、意見交換ができたことは貴重な経験となりました。(文責:大野 良和)
自由集会⑤ 「若手によるサンゴ礁研究の武器自慢」
オーガナイザー:山崎 敦子(北海道大学・喜界研),樋口 富彦(東京大学・大海研)
サンゴ礁研究にはどのような方法論があるのだろう、我々若手の研究者にはまだまだ知らないことがたくさんあります。自身のとは違った研究手法を知ることで個々の研究の発展や共同研究のきっかけになればと思い本自由集会を企画しました。発表者には、これまで培ってきた個々の『研究の武器』を紹介してもらうことを念頭に発表をお願いしました。サンゴ年輪、モデリング、生体化学、社会科学、環境ストレス応答と多種多様な研究が紹介(自慢)され、まだまだ知らない手法、自身の研究にも取り入れられそうな手法があるのだと再確認する集会となりました。みなさん丁寧に研究方法を紹介(自慢)頂いたため、また、個々の話が興味深く活発な議論が展開されたため予定していた時間を大幅にオーバーしてしまいましたが、共同研究のきっかけになりそうな議論も行うことができました。若手を中心とした会らしく、良い意味で緩く自由な雰囲気で進めることができ非常に満足できる内容となりました。会場の移動や他の自由集会と重なったため集客がどうなるのかと思っていましたが、心配をよそに20名を超える参加を頂きました。その後の懇親会は、終電のない沖縄らしく、日付が替わった後でも大いに盛り上がっておりました。ご参加頂いた皆様、直前のお願いにも関わらず発表を快諾頂いた発表者の方々ありがとうございました。(文責:樋口 富彦)
自由集会⑥ 「サンゴ礁保全委員会全体集会『2016 年サンゴ白化の情報交換と総括』」
オーガナイザー:中野 義勝(サンゴ礁保全委員会委員長)
サンゴ礁保全委員会の全体会として自由集会を実施しました。今夏の大規模白化現象の発生に伴い、以下の方々に事例報告を頂き総括を行いました。
中野圭一(環境省那覇市前環境事務所)は、石西礁湖及び慶良間諸島での調査結果から、慶良間諸島では白化率・死亡率とも軽微であったのに対し、石西礁湖では白化率が9割を超えその半数が死亡という深刻な報告をしました。
山野博哉(国立環境研究所)は、サンゴマップによる収集情報と衛星データを用いた広域解析を行い、状況分析への有効性を示しました。
大堀健司(エコツアーふくみみ)は、石垣島・平野のサンゴ礁観察会での児童の衝撃と指導の難しさと今後への不安を報告しました。
小島香菜(琉球大学理工学研究科)は、フィールド調査を元に石西礁湖で種組成の変化が起こる可能性を示しました。
比嘉義視(恩納村漁協)は、直線距離20km 程の恩納村海域で白化の状況はまちまちで、同種でも群体による変異が見られたと報告しました。
金城浩二(海の種)は、養殖群体の選抜によって白化耐性種苗の作出の可能性を示しました。
猪澤也寸志(エコガイドカフェ)は、群体の微細な観察で強光の影響と付着藻類との関係を報告しました。
中野からは、白化被害を気象災害と認定して社会的な取り組みを促すことを提案しました。
会場に入りきらない50 名以上の参加者での総括討論では、頻発する白化被害でサンゴ礁の劣化は今後も進行し、適応的な管理が求められていることを確認し、総括を取りまとめることとしました。
(文責:中野 義勝)